システムの信頼性特性と評価
2026.10.08
このページでは、RASISとバスタブ曲線、MTBF・MTTRを使った稼働率と故障率の計算、直列・並列システムの稼働率の求め方がわかります。
- 一言で言うと:
- システムが「どれくらい止まらないか」を、RASISやバスタブ曲線で考え、稼働率や故障率を計算する話。稼働率はどの試験区分でも頻出の計算問題。
信頼性の物差し(RASIS、バスタブ曲線)→ 稼働率と故障率を計算 → 装置が複数のとき(直列・並列)→ 通信網に当てはめる
覚え方の軸
- RASISは「止まらない・使える・直しやすい・データが正しい・守られている」:
- 数字で測るのはR(MTBF)、A(稼働率)、S(MTTR)の3つ
- 稼働率 = 動いていた時間 ÷ 全体の時間 = MTBF ÷(MTBF + MTTR)
- 故障率は MTBF の逆数:
- 直列は「かけ算」、並列は「1 − 両方止まる確率」:
- 複雑な構成は、並列の部分から1つの装置にまとめていく
- 困ったら「ある部品が壊れた場合/動いている場合」に分けて足す(通信網のブリッジ構成)
システムの信頼性評価指標:RASISとバスタブ曲線
- システムの信頼性:
- システムがどれくらい安定して稼働しているか(稼働するか)を表す指標
- RASIS:
- 信頼性を評価する5つの概念の頭文字。システムがフォールトトレラントシステムかどうかを評価する
| 項目 |
意味 |
指標 |
| 信頼性(Reliability) |
故障せずに連続して動く |
MTBF(平均故障間隔)。大きいほど信頼性が高い |
| 可用性(Availability) |
使える度合い(使用可能度) |
稼働率(アベイラビリティ)= MTBF ÷(MTBF + MTTR)。復旧が早いほど高い |
| 保守性(Serviceability) |
修理のしやすさ(保守容易性) |
MTTR(平均修理時間) |
| 保全性(Integrity) |
記録されたデータの完全性(不整合の起こりにくさ)。完全性ともいう |
― |
| 安全性(Security) |
データの災害、障害、コンピュータ犯罪などへの耐性。機密性ともいう |
― |
- バスタブ曲線(故障率曲線):
- ハードウェア機器の信頼性管理手法。フォールトアボイダンスを評価する
- 横軸に経過時間、縦軸に故障率をとる。形がお風呂(バスタブ)の断面に似ている
| 期間 |
中身 |
故障率 |
| 初期故障期間 |
使い始め。製造不良や使用環境との不適合で故障が多い |
時間とともに減る |
| 偶発故障期間 |
初期の不具合が直り、偶発的な故障だけが起きる |
一定 |
| 摩耗故障期間 |
寿命の終わりごろ。材料の劣化や接点の摩耗で故障が増える |
増える |
- ★ワイブル分布(試験):
- 時間とともに起きる故障を統計的にモデル化したもの。初期故障、偶発故障、摩耗故障を表す関数(ハザード関数)もモデル化できる。「ワイブル分布ときたらバスタブ曲線」
- RASISとバスタブ曲線の対応:
- RASISはフォールトトレランス、バスタブ曲線はフォールトアボイダンスを評価する
システムの信頼性計算:稼働率と故障率
- 稼働率(アベイラビリティ):
- RASISの「A:可用性」の指標。システムの信頼性を評価する最も重要な尺度(★頻出。公式を使えるようにする)
- MTBF(Mean Time Between Failure、平均故障間隔)=
- 稼働時間の合計 ÷ 回数 =(t1 + t2 + … + tn)÷ n
- MTTR(Mean Time To Repair、平均修理時間)=
- 修理時間の合計 ÷ 回数 =(r1 + r2 + … + rn)÷ n
- ★稼働率 =
- MTRS(Mean Time to Restore Service、平均サービス回復時間):
- MTTRが「修復にかかる時間」の平均なのに対し、MTRSは「ユーザが再び使えるようになるまで」の平均時間
- 例題(ある期間に5回故障した):
- 稼働時間:
- 修理時間:
- MTBF = 500 ÷ 5 = 100時間、MTTR = 10 ÷ 5 = 2時間
- 稼働率 = 100 ÷ 102 ≒ 0.98
- 「稼働 → 故障 → 修理」で1周期なので、回数で割って平均する
- 簡単な例:
- MTBF 98時間、MTTR 2時間なら、稼働率 = 98 ÷ 100 = 0.98
- 稼働率を上げる方法
| MTBFを長くする(壊れにくくする) |
MTTRを短くする(早く直す) |
| 冗長度の高いシステム構成 |
エラーログ情報の採取 |
| 予防保守の実行 |
遠隔地保守 |
| 自動誤り訂正機能などの導入 |
保守センタの分散配置 |
- デュアルシステムや、デュプレックスシステムのホットスタンバイは、MTTRを短くする構成
- 故障率:
- 単位時間あたりに故障する確率(回数)
- 故障率 =
- JIS Z 8115では「故障回数 ÷ 総稼働時間」(=1/MTBF)を平均故障率と呼ぶが、情報処理試験では故障発生数(故障発生率)と表現している
- 直列システムの故障率 =
- λ1 + λ2 + … + λn(どれか1つが壊れたら全体が止まるので、足し算)
- 例題(故障率からMTBFを求める):
- 周辺装置のMTBFは1,000時間。処理装置は、1時間に故障する確率が10⁻⁷の部品3万個でできている
- 周辺装置の故障率 = 1/1,000
- 処理装置の故障率 = 10⁻⁷ × 3×10⁴ = 3×10⁻³ = 3/1,000
- 全体の故障率 = 1/1,000 + 3/1,000 = 4/1,000 = 1/250 → MTBF = 250時間
- コツ:
- 故障していない機器の台数を求める
- 故障していない確率 F(t) =
- e^(−λt)(λ:故障率、t:経過時間。λt=0のときF(t)=1)
- 例題:
- 故障率 λ = 2.0×10⁻⁶回/秒の機器が2,000台。50時間後に故障していない台数は?
- t = 50時間 = 50 × 60 × 60 = 18×10⁴秒、λt = 2×10⁻⁶ × 18×10⁴ = 0.36
- e^(−0.36) ≒ 0.70(試験ではグラフから読む)
- 2,000台 × 0.7 = 約1,400台
- 式の出どころ:
- 故障密度関数 g(x) = λe^(−λx) を0からtまで積分すると、t時間までに故障する確率 1 − e^(−λt) になる。故障していない確率はその残りで e^(−λt)
複数システムの稼働率:直列と並列
- ★直列接続:
- 両方とも正常のときだけ動く
- 稼働率 = R1 × R2
- ★並列接続:
- どちらかが動いていれば動く(両方止まったとき以外は動く)
- 稼働率 = 1 −(1 − R1)×(1 − R2)(1 − システムが稼働しない確率)
- 例(R=0.9 の装置2台):
- 直列 = 0.9 × 0.9 = 0.81(1台より下がる)
- 並列 = 1 − 0.1 × 0.1 = 0.99(1台より上がる)
- 直列と並列の組合せ(AとBの並列に、Cが直列につながる構成):
- 手順:
- 基本公式が使える部分から計算し、1つの装置とみなして全体へ広げる
- ①AとBの並列部分 = 1 −(1 − R)²
- ②それとCの直列 = {1 −(1 − R)²} × R = 2R² − R³
- 検算(R=0.9):
- 0.99 × 0.9 = 0.891、2×0.81 − 0.729 = 0.891(一致)
- ★2 out of 3 システム(頻出公式):
- 3個のうち2個以上が正常でなければいけないシステム
- 3個とも正常 = R³
- 2個正常・1個故障 = 3 × R² ×(1 − R)(どれが壊れるかで3通り)
- 信頼性 = R³ + 3R²(1 − R) = 3R² − 2R³
- 検算(R=0.9):
- 0.729 + 0.243 = 0.972、2.43 − 1.458 = 0.972(一致。RAID5の稼働率と同じ式)
通信網の構成と信頼性:通信路に当てはめる
- 不稼働率:
- 稼働しない確率 = 1 − 稼働率
- 本来は故障率ではないが、情報処理試験では「故障率」として扱うことがある
- 不稼働率から稼働率を求める(P1、P2は不稼働率)
- 直列の稼働率 =
- (1 − P1)×(1 − P2)
- このときの不稼働率 = 1 −(1 − P1)×(1 − P2)
- 並列の稼働率 =
- 1 − P1 × P2
- このときの不稼働率 = P1 × P2(両方とも止まる確率)
- 具体例(ブリッジ構成):
- 拠点X、Y、中継点M、Nがあり、X〜M、X〜N、M〜Y、N〜Y、M〜N の5つの通信路がある。各通信路の故障率をp、中継点などの故障は無視する。X〜Yが通信できる確率は?
- 考え方:
- 真ん中のM〜Nが「故障の場合」と「正常の場合」に分けて考える
- M〜Nが故障の場合:
- 「X〜M〜Y」の直列 =(1 − p)²、「X〜N〜Y」の直列 =(1 − p)²
- その2本の並列 = 1 − {1 −(1 − p)²}²
- M〜Nが正常の場合:
- MとNが1点とみなせるので、「X〜M」と「X〜N」の並列 = 1 − p²、「M〜Y」と「N〜Y」の並列 = 1 − p²
- その2つの直列 = (1 − p²)²
- ★全体(M〜Nが故障する確率はp、正常な確率は1 − p):
- [1 − {1 −(1 − p)²}²] × p +(1 − p²)² ×(1 − p)
- 検算(p=0.1):
- 故障の場合 = 1 −(1 − 0.81)² = 1 − 0.0361 = 0.9639
- 正常の場合 =(1 − 0.01)² = 0.9801
- 全体 = 0.9639 × 0.1 + 0.9801 × 0.9 = 0.09639 + 0.88209 ≒ 0.978
- ★試験:
- このような書き換え(真ん中の通信路が正常なら2点を1点にまとめる)ができることと、全体の式を導けることが大事
構成のしかたで稼働率が変わる
- 4本の回線(故障確率はすべて同じ)で2点間をつなぐとき、つなぎ方で稼働率が変わる
- 構成1(直列を並列に):
- 「回線1 → 回線2」の直列と、「回線3 → 回線4」の直列を並列にする
- 構成2(並列を直列に):
- 「回線1と回線3の並列」と、「回線2と回線4の並列」を直列にする
- 構成3(ブリッジ):
- 構成1の真ん中どうしを5本目の回線でつなぐ。5本目が故障なら構成1と同じ、正常なら構成2と同じ
- 稼働率の高い順は 構成2 > 構成3 > 構成1
- 検算(故障確率0.1):
- 構成1 = 1 −(1 − 0.81)² = 0.9639、構成2 =(1 − 0.01)² = 0.9801、構成3 ≒ 0.978(上の具体例と同じ構造)
- ポイント:
- 同じ部品数なら、細かく並列にしてから直列にするほうが、直列にしてから並列にするより稼働率が高い
故障率を表す単位 FIT
- FIT:
- 例:
- 5,000FITの故障率 = 5,000 ÷ 10⁹ = 5×10⁻⁶ → MTBF = 1 ÷ 故障率 = 2×10⁵時間
- 年に直すと 200,000 ÷(24 × 365)= 200,000 ÷ 8,760 ≒ 22.8年
混同しやすいペア
- 信頼性R(MTBF、壊れにくさ)/可用性A(稼働率、使える割合)/保守性S(MTTR、直しやすさ)
- 保全性I(データの完全性)/安全性S(データの耐性、機密性)
- MTBF(平均故障間隔、長いほど良い)/MTTR(平均修理時間、短いほど良い)/MTRS(使えるようになるまで)
- RASIS(フォールトトレランスを評価)/バスタブ曲線(フォールトアボイダンスを評価)
- 初期故障(減っていく)/偶発故障(一定)/摩耗故障(増えていく)
- 故障率(1 ÷ MTBF)/不稼働率(1 − 稼働率)
- 直列の稼働率(かけ算)/直列の故障率(足し算)
- 直列の稼働率(R1 × R2)/並列の稼働率(1 −(1 − R1)(1 − R2))
- 直列を並列に(低い)/並列を直列に(高い)
← 04 システム構成要素の目次に戻る