このページでは、情報戦略と業務モデル、EA、ITガバナンス、NPVなどによるIT投資の評価、BPRとBPM、SaaS・PaaS・IaaSなどのクラウドがわかります。
- 一言で言うと:
- 会社がITを思いつきで作らずに、どう計画し、誰が責任を持ち、どこにお金をかけ、業務をどう変え、何を使って実現するか、という話。
計画する → 全体で最適化する → 誰が責任を持つか決める → お金をかける先を決める → 業務を変える → 使うサービスを選ぶ
覚え方の軸
- すべては経営戦略から始まる:
- 経営戦略 → 情報戦略 → 情報システム化計画 → 情報システム、の順に「上から下へ」具体化する
- 「現状(As-Is)とあるべき姿(To-Be)を比べて、差を埋める」が繰り返し出てくる型:
- ギャップ分析、フィット&ギャップ分析、EA、現行モデル → 将来モデル
- ITの責任は「決めて見張る人(取締役会等=ガバナンス)」と「実行する人(経営者=マネジメント)」に分かれる
- 投資の判断は「何年で元が取れるか(回収期間)」か「いくら儲かるか(NPV)」
- お金の時間価値を入れるかどうかで手法が分かれる
- 業務の変え方は「一気に作り直す(BPR)」か「回し続ける(BPM)」か
- クラウドは「事業者がどこまで用意するか(SaaS → PaaS → IaaS)」で分ける
情報システム戦略:ITは経営戦略から逆算して作る
- 順番:
- 経営戦略 → 情報戦略 → 情報システム化計画 → 情報システム
- 情報戦略:
- 経営戦略を実現するための「情報資源を戦略的、効果的に活用していく方針や計画」
- 経営戦略の「おまけ」として後から作るのではなく、経営戦略の一部として一緒に作る(ひっかけ注意)
- 立案するときは、中長期の経営計画と整合性をとる
- 情報資源の3要素:
- ①データ資源 ②情報基盤(ハード・ソフト・ネットワーク・データベースなど) ③情報化リテラシ(情報活用能力、ノウハウ、スキル)
- 情報システム化計画:
- 企業のあるべき姿を前提に、情報システムのあるべき姿を描き、「何をいつまでに実現するか」を具体的に計画する
- 中長期の計画は、情報システム化基本計画ともいう
- 投資には莫大な費用がかかるので、効果と費用のバランスを考える。立案時には、情報システムの有効性と投資効果を明確にする
- 業務モデル:
- 組織の活動と、その活動に必要なデータの関係を表した論理モデル。「情報システムのあるべき姿」のこと
- 作る順番は、ビジネスプロセスの定義 → データモデルの定義 → 両者の関連づけ
- 全社レベルの業務モデルには、ふだんの業務だけでなく、意思決定活動や計画活動も含める
- 業務の目的を明確にし、システムに求められる本質的なニーズを表に出すためにも重要
- ビジネスプロセス(業務プロセス)の定義:
- 今の組織や業務にとらわれず、本来あるべき業務の流れを定義する。図にはDFDを使う
- 手順:
- 現行物理モデル(今の業務とシステムを分析)→ 現行論理モデル → 将来論理モデル(業務のあるべき姿。本来あるべき機能と現状を比べ、経営戦略・目標を加える)
- データモデル(情報モデル)の定義:
- ビジネスプロセスに必要なデータを明らかにし、全社のデータモデルを作る。図にはE-R図を使う
- 手順:
- 基本的なエンティティだけを抜き出して概略図(鳥瞰図)を作る → エンティティを詳しくし、すべてのリレーションを明確にする
- ギャップ分析:
- 本来あるべき業務と現状を比べ、分析・評価すること
- フィット&ギャップ分析:
- ERPなどのパッケージと自社業務が、どれだけ合っていて(フィット)、どれだけずれているか(ギャップ)を調べること
全体最適化:部署ごとでなく会社全体で考える
- 全体最適化:
- 組織全体の業務とシステムを、経営戦略に沿った「あるべき姿」に向けて改善していく取組
- EA(エンタープライズアーキテクチャ):
- 業務とシステムを4つの体系で整理・分析し、全体最適の観点から見直す手法。上から「業務 → データ → アプリ → 技術基盤」
| 体系 | 中身 | 参照モデル | 主な成果物 |
|---|---|---|---|
| BA(ビジネス)=業務体系 | 業務プロセスや情報の流れ | BRM | 業務説明書、機能構成図(DMM)、機能情報関連図(DFD)、業務流れ図(WFA) |
| DA(データ)=データ体系 | データの内容、関連、構造 | DRM | 情報体系整理図(UMLクラス図)、実体関連ダイアグラム(E-R図)、データ定義表 |
| AA(アプリケーション)=適用処理体系 | システムの機能や構成 | SRM | 情報システム関連図、情報システム機能構成図 |
| TA(テクノロジ)=技術体系 | 構築・運用に必要な技術的な部品 | TRM | ネットワーク構成図、ソフトウェア構成図、ハードウェア構成図 |
- 参照モデル:
- EAの図表を作るときに参考にする図法(モデル)
- DMM(機能構成図):
- 3行3列のマトリックスで、業務機能をトップダウンで階層的に分解した図。システムの対象範囲を明確にする
- As-Isモデル(現状)とTo-Beモデル(あるべき姿)を比べて目標を明確にし、現実的な次期モデルを決める
- バックキャスティング:
- ゴールから逆算して、今やることを決める(EAの考え方)
- フォアキャスティング:
- ゴールは示さず、今の問題や課題を抜き出して、一つずつ解決していく
- EAでITガバナンスを強化し、経営の視点からIT投資の効果を高める
ITガバナンスと組織体の体制:ITの責任者は誰か
- ガバナンス:
- 組織に指示を出して管理する仕組み。ITガバナンスはその構成要素の一つ
- システム管理基準での定義:
- 「取締役会等がステークホルダのニーズに基づき、組織体の価値及び組織体への信頼を向上させるために、ITシステムの利活用のあるべき姿を示すIT戦略と方針の策定及びその実現のための活動」
- 令和5年4月に改訂された最新版は、ITガバナンス編とITマネジメント編の2編構成
- 役割の分担
- 取締役会等(取締役会、理事会など):
- ITガバナンスを実践する実行責任を負う。IT戦略(ITガバナンス方針とIT基本計画)を示し、実行組織を置いて権限を委ねる。経営者の実行状況をモニタリングする
- 経営者(CEO、CIOなどの執行役員):
- IT戦略に基づいて目標を達成する実行責任と、取締役会等への説明責任を負う(ITマネジメント)
- ガバナンス運営グループ:
- ITマネジメントとITガバナンスの橋渡し役。取締役会等が任命したCIOなどで構成し、評価・指示・モニタに必要な情報を集めて提供する
- 取締役会等(取締役会、理事会など):
- EDMモデル:
- ITガバナンスのモデル。Evaluate(評価)・Direct(指示)・Monitor(モニタ)の3つ
- COBIT:
- ITガバナンスとITマネジメントを円滑に運用し、成熟度を測るためのフレームワーク
IT投資戦略とITマネジメント:どのITにお金を出すか
- IT投資マネジメント:
- IT投資の費用対効果を出し、評価と制御を行う。2階層で構成される
| 階層 | 計画 | 実施 | 評価・改善 |
|---|---|---|---|
| 戦略マネジメント(全社) | 評価方法とIT投資ポートフォリオの選択基準を決める。必要な情報資本と今の情報資本のギャップを分析し、投資テーマを起案する。投資するテーマ(プロジェクト)を選ぶ。全社IT投資計画を作る | 個別プロジェクトのマネジメント(実行状況のフォローなど) | 経営者の視点で目標の実現度を評価し、課題を出す。プロセスやポートフォリオを見直す |
| 個別プロジェクトマネジメント | 事前評価:効果目標を設定し、投資額を見積もる。上位マネジメントが全体最適の観点から実施するかを決める | 中間評価:計画と実績の差とその原因を分析し、見込みを上位に報告する。必要なら計画を修正する | 事後評価:効果目標が達成されたかを評価する。プロセスを見直し、他の投資計画に反映する |
- ★試験では、事前評価・中間評価・事後評価でそれぞれ何をするかが問われる
- IT投資ポートフォリオ:
- IT投資を、リスクや価値が似ているものごとに分類し、分類ごとの投資割合を管理して全体最適を図る手法(例:リスクの高い戦略的投資と、リスクの低い業務効率化投資のどちらを優先するか)
- 投資の意思決定法
| 手法 | ざっくり | 判断基準 |
|---|---|---|
| PBP法(回収期間法) | 回収額の累計が投資額に等しくなるまでの期間(PBP:Pay Back Period) | 基準年数より短ければ投資。短いほど良い |
| DPP法(割引回収期間法) | PBP法にお金の時間価値を加えたもの。回収額を現在価値に割り引いて回収期間を出す | 短いほど良い |
| NPV法(正味現在価値法) | 回収額の現在価値の合計 − 投資額 | 大きいほど良い |
| IRR法(内部収益率法) | NPVがちょうど0になる割引率(IRR) | 高いほど良い |
- 現在価値:
- 将来のお金の、今の時点での価値。利率5%なら「1年後の105万円(将来価値)=今の100万円(現在価値)」
- 式:
- 現在価値=将来価値 ÷(1+割引率)ⁿ(n年後)
- NPVの例(期間3年、割引率5%、投資額はどちらも300万円)
- 案件X(回収50→100→180):
- 50/1.05+100/1.05²+180/1.05³ − 300 = 47.6+90.7+155.5 − 300 = −6.2
- 案件Y(回収180→100→50):
- 171.4+90.7+43.2 − 300 = 5.3 → Yを選ぶ
- ポイント:
- 回収の合計は同じ330万円でも、早く回収できるほうが現在価値は大きい
- 案件X(回収50→100→180):
- DCF法:
- 将来価値を現在価値に換えて評価する方法。NPV法とIRR法はDCF法の仲間
業務プロセスの改善:業務のやり方を変える
- BPR(リエンジニアリング):
- 組織やビジネスルールを抜本的に見直し、業務・組織・システムを再設計すること(一度に大きく改革する)
- マイケル・ハマーの定義:
- 「顧客の満足度を高めることを主眼とし、最新の情報技術を用いて業務プロセスと組織を抜本的に改革すること」
- BPM:
- 業務プロセスにPDCAを当てはめ、継続的にBPRを行う考え方。「分析・設計 → 構築 → モニタリング・評価 → 改善・再構築」を回し続ける
- IDEAL:
- プロセス改善のライフサイクルのリファレンスモデル。5つのフェーズ
- 開始(Initiating)
- 診断(Diagnosing):
- 現状を調べて可視化し、改善ポイントを明らかにする
- 確立(Establishing):
- 優先順位を決め、改善計画を作る
- 行動(Acting):
- 解決策を作り、先行評価・試行・展開する
- 学習(Learning):
- 改善活動を分析して妥当性を確かめ、次のサイクルの準備をする
- ECRS:
- 業務改善の4つの視点。Eliminate(排除:なくせないか)→ Combine(結合:まとめられないか)→ Rearrange(交換:順序や担当を入れ替えられないか)→ Simplify(簡素化:単純にできないか)
- 業務プロセスの可視化手法(上流工程で可視化すると、設計のベースになり、関係者で解釈を共有できる)
- WFA(Work Flow Architecture):
- 業務の流れと、データが処理される組織(場所)や順序を明確にした図
- BPMN:
- イベント・アクティビティ・分岐・合流のオブジェクトと、フローの矢印で業務を表した図
- WFA(Work Flow Architecture):
- BPO:
- コアビジネス以外の業務を、情報システムと合わせて外部の専門業者に委託すること。経営資源をコアビジネスに集中させる
- オフショアアウトソーシング:
- コスト削減のため、物価の安い海外の企業に委託すること
- RPA:
- ルール化された定型的な事務作業を、ルールエンジンやAIを持つソフトウェアロボットに代わりにやらせる
- ルールエンジン:
- 「こういう場合はこうする」という判断・分岐処理を行う専用ソフトウェア
- ワークフローシステム:
- 申請から決裁までの事務手続を電子化するシステム。稟議システム、電子決裁システムともいう
- BRMS(ビジネスルール管理システム):
- ビジネスルール(例:経費が1万円未満なら課長、以上なら部長が決裁)を業務アプリから切り離してルールベースとして蓄積し、いつでも登録・変更できるようにする仕組み。ルールが変わるたびにプログラムを直さなくて済む
ソリューションサービス:何を使って実現するか
- ソリューション:
- 組織が使うITシステムを構成する、個別の製品やサービスの総称
- クラウドサービス:
- 共用の構成可能なコンピューティングリソースを、インターネット経由で自由・柔軟に使えるサービス。JIS X 9401では、SaaS・PaaS・IaaSなど7つの区分を定義している
- 事業者がどこまで用意するかで区分する
| 区分 | 事業者が用意 | 利用者ができること |
|---|---|---|
| SaaS | アプリまで全部 | 事業者のアプリを使う(例:Gmail) |
| PaaS | ミドルウェア・OSまで | 自分で作った(または入手した)アプリを配置・管理・実行する。アプリは事業者がサポートする言語で作る |
| IaaS | ハードウェア(演算・ストレージ・ネットワーク) | OS、ストレージ、アプリを制御できる。物理・仮想化リソースの管理はできない(例:AWS EC2) |
- 利用モデル
- プライベートクラウド:
- 1つの企業や団体だけで使う
- パブリッククラウド:
- 不特定多数が使う
- コミュニティクラウド:
- 複数の企業や団体で共有する(自治体クラウド、医療クラウドなど)
- ハイブリッドクラウド:
- 2つ以上を組み合わせる(例:機密情報はプライベート、それ以外はパブリック)
- プライベートとコミュニティには、オンプレミスとオフプレミスの2形態がある
- プライベートクラウド:
- オンプレミス:
- 自分が管理する設備に導入して運用する(自社運用型)
- オフプレミス:
- 事業者の設備を借りて運用する(他社運用型)
- IaC(Infrastructure as Code):
- サーバやネットワークの構成をコードで書き、実行して環境を作ること。コスト効率、速さ、柔軟性を実現する
- SOA(サービス指向アーキテクチャ):
- 業務の一処理にあたる機能を「サービス」の単位で作り、組み合わせてシステムを作る考え方。ビジネスの変化に対応しやすい
- ESB:
- SOAで、サービス間のデータ形式の変換や非同期連携を行う仕組み
- マイクロサービスアーキテクチャ:
- SOAの進化形。さらに小さく、互いに独立したサービスに分けて連結する。各サービスは他に影響せずに変更できる
- ホスティングサービス:
- 事業者のサーバの一部を借りて、自社のサーバとして使う
- ハウジングサービス:
- 事業者の施設を借りて、自分のサーバや通信機器を置く。専用ラックを借りる形をハウジング、専有スペースを借りる形をコロケーションということもある
- CASB(Cloud Access Security Broker):
- 利用者とクラウド事業者の間に置き、クラウドの利用状況を可視化・監視・制御する仕組み。許可なくクラウドを使っている人(シャドーIT)を見つけられる
混同しやすいペア
- BPR(一度に大改革)/BPM(PDCAで継続的に改善)
- ガバナンス(取締役会等:IT戦略を示し、実行責任を負い、モニタリングする)/マネジメント(経営者:目標達成の実行責任と説明責任)
- バックキャスティング(ゴールから逆算)/フォアキャスティング(今の課題から積み上げ)
- ホスティング(サーバを借りる)/ハウジング(場所を借りて自分のサーバを置く)
- PBP法(時間価値なし)/DPP法(時間価値あり)
- NPV(儲けの金額)/IRR(NPVが0になる割引率)
- ギャップ分析(あるべき姿と現状の比較)/フィット&ギャップ分析(パッケージと自社業務の比較)
- 事前評価(効果目標と投資額)/中間評価(計画と実績の差)/事後評価(効果目標の達成度)
- SOA(サービス単位で組み合わせる)/マイクロサービス(さらに小さく、完全に独立)
- 現行物理モデル → 現行論理モデル → 将来論理モデル(この順番)