このページでは、回線交換とパケット交換の違い、53バイト固定長のATM、フレームリレー(DLCI、CIR)、MTUとフラグメント化がわかります。
- 一言で言うと:
- 通信路をどうやって複数の利用者で使い回すか(交換方式)の話
- 道を独占する回線交換に対して、データを小分けにして相乗りするパケット交換。その発展形のATM(長さを53バイトにそろえる)と、手間を省いたフレームリレーが出てくる
小分けにして相乗り(パケット交換方式)→ 長さをそろえて速く(ATM交換方式)→ 手間を省いて速く(フレームリレー)→ 一度に送れる大きさ(MTU)
覚え方の軸
- 交換方式は「道を独占するか、相乗りするか」
- 回線交換方式は、通信の間ずっと回線を確保する(電話)。遅延はないが、使っていない時間も独占する
- パケット交換方式は、パケットに宛先を付けて相乗りする。回線を効率よく使えるが、蓄積交換による遅延がある
- ATMとフレームリレーは、パケット交換を「速くする工夫」の2つの方向
- ATMは、パケット(セル)の長さを53バイト固定にして、ハードウェアで高速処理する
- フレームリレーは、フロー制御や再送制御を省いて、誤りの回復は端末に任せる
- 回線を見分ける番号は方式ごとに違う
- パケット交換はLCN・LCGN、ATMはVPI・VCI、フレームリレーはDLCI
- ATMセルは「5+48=53」
- ヘッダ5バイト、ペイロード48バイト
パケット交換方式とATM交換方式(★)
① パケット交換方式
- パケット交換方式:
- 回線交換方式と対になる考え方
- データを送るノードは、データをパケットという単位に区切り、1つひとつのパケットに宛先情報(ヘッダ)を付けて送る
- ネットワークの中では、パケット交換機にパケットが蓄積され、ネットワークの状況に応じて順に送り出される
- 回線交換方式:
- 電話などのように、二者間で回線を確保したまま行う通信方式
- 通信するノード間で物理的な通信路を確保してから通信を始める(パケット交換方式は、これをしない)
- 回線交換とパケット交換の例え:
- 回線交換は、貸し切りバス。2人だけで乗っても、バス1台を独占する
- パケット交換は、宅配便。荷物を小分けにして伝票(ヘッダ)を付け、いろいろな人の荷物と一緒にトラックに積む。集配所(パケット交換機)でいったん預かってから送り出す
パケット通信のメリット(★)
| メリット | 中身 |
|---|---|
| 耐障害性 | 通信路を固定しないので、迂回経路がとれる。パケット交換機にデータが蓄積されているので、復旧まで待つこともできる |
| パケット多重 | 1対1の通信で回線を占有する必要がないので、1つの回線を多くのノードで共有でき、回線をより効率的に使える |
| 異機種間接続性 | パケット交換機で中継するときに、プロトコル変換、速度変換などを行えば、エンドノードどうしが同じプロトコルをサポートしていなくても通信できる |
- パケット通信のデメリット:
- 網内の蓄積交換処理による遅延の発生
- パケットの到着順序の不整合(違う道を通ると、後から出したパケットが先に着くことがある)
- 遅延への対応:
- 蓄積交換処理による遅延をなくすため、パケット交換方式では主に回線の帯域を広げることで対応してきた
- でも、その構造上、遅延を完全になくすことは不可能
② ATM交換方式
- ATM(Asynchronous Transfer Mode:非同期転送モード):
- 遅延のない回線交換方式と、パケット交換方式の利点だけを受けるために考えられた技術
- 形としては、従来のパケット交換方式を発展させたもの
- ATMが着目した点:
- パケット交換機で起きる遅延の原因の1つは、パケットの多様性
- いろいろなパケットに対応するため、パケット交換機は複雑なソフトウェアで処理している
- ATMは、ここに着目し、パケット転送の処理時間をできるだけ短くする工夫をした
- セル:
- ATMでのパケットのこと
- 長さを「ヘッダ部5バイト、ペイロード48バイト」の53バイトに統一した
- そのため、パケットの解析に複雑なソフトウェアが不要になり、ハードウェアによる高速な処理を実現した
- ATMセルの構成:
- セルヘッダ(宛先情報)5バイト + 情報部(ペイロード)48バイト = 1セル(53バイト)
- 宛先情報は、VPI(仮想パス識別子)とVCI(仮想チャネル識別子)
- ペイロード(payload):
- データ通信で、本来送りたいデータ本体の部分
- ATMはペイロードのサイズを固定して処理を簡単にしたが、パケット全体に占めるペイロードのサイズが相対的に小さく、オーバヘッドが大きいという難点がある
- ATMの例え:
- 荷物を全部同じ大きさの箱(セル)に入れて送る。箱の大きさが決まっているので、仕分け機(ハードウェア)で一瞬で処理できる。ただし、箱の外側(ヘッダ)の分だけ、いつも少し無駄が出る
例題(ATMセル)
- 問題:
- ①ATMセル全体のうち、ペイロードの割合は何%か
- ②1,000バイトのデータをATMで送ると、セルは何個必要で、全部で何バイトになるか
- 答え:
- ①48 ÷ 53 ≒ 90.6%(ヘッダが 5 ÷ 53 ≒ 9.4%)
- ②1,000 ÷ 48 ≒ 20.8 なので、切り上げて 21セル。21 × 53 = 1,113バイト
- 検算:
- 20セルでは 20 × 48 = 960バイトで足りない。21セルなら 21 × 48 = 1,008バイトで足りる
- 21 × 53 = 1,050 + 63 = 1,113
- わかること:
- 送りたいのは1,000バイトなのに、実際は約1.1倍の量を送ることになる(これがオーバヘッド)
ATMの階層構造
| 階層 | 中身 |
|---|---|
| AAL(ATM Adaptation Layer) | ATM層と上位のアプリケーションの橋渡しをする。ATMはセルを53バイトに固定するなど独立性の高い規格。一方、上位のアプリケーションは画像、音声、文字などいろいろなデータを扱い、ATMの規格に関係なく送受信を要求する。だから、これらを整合させる必要がある。AALのおかげで、上位のアプリケーションはATMを意識せずに通信できる |
| ATM層 | 53バイトのセルのフォーマットを決めている |
| 物理層 | ツイストペアケーブルや光ファイバといった物理伝送媒体の上での信号伝送機能を決めている |
- ATMとOSIの対応:
- ATM層とAALは、OSI基本参照モデルでは、ともにデータリンク層にある
- だから、ネットワーク層にあるIPは、イーサネットなどとの違いを意識せずに、ATMを使える
- AALの例え:
- いろいろな形の荷物(画像、音声、文字)を、決まった大きさの箱(セル)に詰め替える梱包係
ATM交換方式とパケット交換方式(★)
| 交換方式 | パケットサイズ | 交換制御パラメタ |
|---|---|---|
| ATM交換方式 | 53バイトの固定長データ | 仮想チャネル識別子(VCI)(Virtual Channel Identifier) |
| パケット交換方式 | 可変長 | 論理チャネル番号(LCN)(Logical Channel Number)、論理チャネルグループ番号(LCGN) |
- 交換制御パラメタ:
- 接続相手(回線)を識別するための情報
- 複数の論理的な回線を設定することで、物理的には1本の回線しかなくても、多重通信ができる
- 例えば、1本の道路に「1番線」「2番線」と仮想の車線を引き、車線番号で行き先を区別する
フレームリレー:手間を省いて速く送る
- フレームリレー:
- パケット交換方式の一種
- フロー制御や再送制御などの処理を簡略化した方式
- これで、通信のオーバヘッドが下がり、伝送効率が上がった
- フロー制御:
- 送るデータの量や間隔を、相手の処理速度や回線の品質に合わせて調節すること
- これで、受信側のバッファがあふれる(オーバフローする)ことなく、データをやりとりできる
- 誤りの回復は端末が行う:
- 伝送誤りが起きたら回復処理が必要だが、フレームリレーで回復処理をするのは、エンドツーエンドにある端末
- 端末に任せる理由:
- 昔の回線品質では、誤り制御などの回復処理はネットワークの中で行ったほうが効率がよかった
- でも、今はほとんど誤りが起きないので、ネットワークのレベルではこうした処理を意識せず、端末側に任せたほうが高速な通信が期待できる
- フレームリレーの例え:
- 途中の中継所ごとに中身を確かめるのをやめて、全部まとめて送り、最後に受け取った人が確かめる。道がきれいになって荷物が壊れにくくなったので、途中の確認を省いても大丈夫になった
- 仮想回線:
- フレームリレーは、1本の回線に複数の仮想回線を作って、フレームの多重化ができる
- DLCI(Data Link Connection Identifier):
- 仮想回線で、通信相手先を識別する識別子
- これを使ってフレームを転送する
- 輻輳(ふくそう):
- フレームリレーはパケット交換方式の一種なので、1つの回線を多数のユーザで共有する
- これは、回線が持つ潜在的な伝送能力(ワイヤスピード)を十分に引き出すのに効果がある
- でも、ユーザの利用が一時期に集中すると、ワイヤスピードを超えるパケットがネットワークに流れることもある
- この状態を輻輳という。輻輳状態になると、スループットが落ちる
- 例えば、お盆の高速道路の渋滞
- CIR(Committed Information Rate:認定情報速度):
- フレームリレーサービスを提供する事業者が、ネットワークが輻輳状態になってスループットが下がっても、最低限保証する通信速度
- 例えば、「どんなに混んでも、時速20kmは出せます」という約束
MTU
- MTU(Maximum Transmission Unit):
- パケットは、どんな大きさで送ってもよいわけではない
- ATMのように、パケットのサイズが完全に固定されているプロトコルもあるが、一般的にはMTUという値で最大パケット長を決めている
| プロトコル | MTU |
|---|---|
| イーサネット | 1,500バイト |
| FDDI | 4,352バイト |
| ATM | 9,180バイト |
- フラグメント化:
- MTUは、プロトコルごとにばらばら
- でも、ユーザが意識しなくて済むように、IPは、これらのデータリンクの特性に合わせてパケットを分割する処理を行っている。これをフラグメント化という
- IPによるデータリンク層の抽象化:
- フラグメント化のように、IPがデータリンクの違いを吸収すること
- IPの重要な役割の1つ
- IPv4ヘッダの識別番号、フラグ、フラグメントオフセットは、分割したパケットを元に戻すための項目
- MTUの例え:
- 宅配便の「1個口の最大サイズ」。会社(プロトコル)によって上限が違うので、大きな荷物は、IPが上限に合わせて分けて送り、届いた先で組み立て直す
例題(フラグメント化)
- 問題:
- IPヘッダ20バイトを含めて4,000バイトのIPパケットを、MTUが1,500バイトのイーサネットで送る。データ部分を何個に分ける必要があるか(各断片にもIPヘッダ20バイトが付くとする)
- 答え:
- データ部分は 4,000 − 20 = 3,980バイト
- 1つの断片に入るデータは 1,500 − 20 = 1,480バイト
- 3,980 ÷ 1,480 ≒ 2.7 なので、切り上げて 3個
- 検算:
- 1,480 + 1,480 + 1,020 = 3,980バイトで、データ部分の合計と一致(3個目は1,020バイト)
混同しやすいペア
- 回線交換方式 / パケット交換方式
- 回線交換方式は、二者間で回線を確保したまま通信する(電話)。遅延はないが回線を占有する
- パケット交換方式は、パケットに宛先を付けて、回線を共有する。効率はよいが、蓄積交換による遅延がある
- 耐障害性 / パケット多重 / 異機種間接続性
- 耐障害性は、迂回経路がとれ、蓄積したデータで復旧を待てる
- パケット多重は、1つの回線を多くのノードで共有できる
- 異機種間接続性は、プロトコル変換や速度変換で、違うプロトコルどうしでも通信できる
- パケット交換方式 / ATM交換方式
- パケット交換方式は、可変長。LCN・LCGNで回線を識別。ソフトウェアで処理
- ATM交換方式は、53バイト固定長(セル)。VCIで回線を識別。ハードウェアで高速処理
- セルヘッダ / ペイロード
- セルヘッダは、5バイト。宛先情報(VPI、VCI)
- ペイロードは、48バイト。本来送りたいデータ本体
- VPI / VCI
- VPIは、仮想パス識別子(太い道)
- VCIは、仮想チャネル識別子(その中の細い道)
- AAL / ATM層
- AALは、ATM層と上位アプリケーションの橋渡し。いろいろなデータをセルに合わせる
- ATM層は、53バイトのセルのフォーマットを決める
- LCN / DLCI
- LCNは、パケット交換方式の論理チャネル番号
- DLCIは、フレームリレーの仮想回線の識別子
- ATM / フレームリレー
- ATMは、セルを固定長にして、ハードウェアで高速化する
- フレームリレーは、フロー制御や再送制御を省いて、誤りの回復を端末に任せて高速化する
- フロー制御 / 誤り制御
- フロー制御は、相手の処理速度などに合わせて、送るデータの量や間隔を調節する
- 誤り制御は、データの誤りを見つけたり直したりする
- 輻輳 / CIR
- 輻輳は、利用が集中して、ワイヤスピードを超えるパケットが流れ、スループットが落ちる状態
- CIRは、輻輳状態でも事業者が最低限保証する通信速度
- ワイヤスピード / スループット
- ワイヤスピードは、回線が持つ潜在的な伝送能力
- スループットは、実際に処理できた量(輻輳で落ちる)
- MTU / フラグメント化
- MTUは、プロトコルごとの最大パケット長(イーサネットは1,500バイト)
- フラグメント化は、IPが、MTUに合わせてパケットを分割すること